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取引主体識別子ニュース:2015年11月更新

Global Legal Entity Identifier Foundationは、取引主体識別子の導入に関する世界的な規制の最新動向をまとめてお伝えします。


著者: シュテファン・ヴォルフ

  • 日付: 2015-11-12
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現在までに40万件以上の取引主体識別子(LEI)が発行されました。 Global Legal Entity Identifier Foundation(GLEIF)は、現時点での高い普及率や、参加者全員が金融市場のさらなる可視性、整合性、安定性を求めていることから、LEIがいずれ広く採用されることを確信しています。

ただ、新しい金融サービス標準の世界的な導入には、常に時間がかかることを覚えておく必要があります。継続した長期間の支援や、公共および民間部門の協力が欠かせません。

LEIの使用を義務化する権利は、各国当局が保持しています。このため、GLEIFは、引き続き規制がLEIの導入を促す一要素となると考えています。したがって、GLEIFは取引主体識別子に関連する規制報告や監督の取り組みを注意深く監視しています。

今後GLEIFブログでは、世界中の公的機関が開始する関連した取り組みについて定期的に情報を提供していきます。このブログ記事では、2015年8月以降に開始された、LEIの導入に関する規制措置の概要をお伝えします。

このブログで使用した引用元は、下記の「関連リンク」に記載されています。

豪州証券投資委員会:デリバティブ取引規則が発効

2015年10月、Finance Magnates Retail FXは改めて次のように述べました。豪州証券投資委員会(ASIC)の2013年デリバティブ取引規則(報告)の補正版(報告規則)により、豪州の店頭(OTC)デリバティブ発行者(2014年6月30日現在、想定未決済ポジション総額が50億オーストラリアドル以下のもの)は、「2015年10月12日以降は報告対象の取引について、2016年4月18日以降は報告対象のポジションについて、初めて報告が義務づけられます。報告を行う多くの取引主体にとって、報告すべきデータの特定と、そのデータを収集し、担当の取引情報蓄積機関が受付可能な形で提出するためのITシステムの開発が重要となります。」

報告対象の取引やポジションについて、報告が必要な共通データには以下のLEIが含まれます。

  • 取引先
  • 受取人(取引先と異なる場合)
  • 報告書作成者(報告を行う取引先と異なる場合)
  • 取引の仲介業者(該当する場合)
  • 手形交換を行った精算会員(該当する場合)

カナダ証券管理局がNational Instrument 45-106 目論見書の免除および付帯ポリシーの改訂を提案

Lexologyによると、2015年8月13日、カナダ証券管理局(CSA)は、「National Instrument 45-106 目論見書の免除および付帯ポリシーの改訂案」の公開と、コメントの受け付けを開始しました。改訂案は、「カナダ全体で、目論見書免除販売の報告形式の統一を目指します」。

「現在、ブリティッシュコロンビア州を除くカナダ全域では、発行人と引受人は免除販売を行った後、45-106F1フォームで報告を行う必要があります。2011年より、ブリティッシュコロンビア州は、より包括的な45-106F6フォームによる報告を独自に義務付けています。改訂案では、45-106F1の代わりに再び全国で単一の報告フォーム(フォーム案)が導入され、45-106F6フォームは廃止となります。」

Lexologyによると、「CSAが一番確認したいのは、フォーム案では、一般へのさらなる情報公開による恩恵と、コストや発行人への負担のバランスがとれているかという点です」フォーム案では、発行人のLEIなど、場合に応じて特定のID番号を公開する必要があります。CSAは、改訂案へのコメントを2015年10月13日まで受け付けていました。

オンタリオ証券委員会が取引情報蓄積機関の規則の改訂案に対するコメントを募集

2015年11月5日、オンタリオ証券委員会(OSC)は、「OSC規則91-507 取引情報蓄積機関およびデリバティブデータ報告(TR規則)」と付帯ポリシーの改訂案を公開し、90日間のコメント受け付けを開始しました。

OSCによると、「TR規則の改訂案により、エンドユーザーの、互いに資本関係のある現地取引先間のデリバティブ取引の報告義務がなくなります。また、エンドユーザーの現地取引先が海外の提携先とデリバティブ取引を行っており、報告に関する同等の法律に従って報告が行われる場合、改訂案によって一部の報告義務が軽減されます。改訂案では、取引レベルデータの一般公開により、オンタリオのデリバティブ市場の透明性を高め、データの整合化をさらに促進するため、LEIに関する既存の要件にも変更が加えられます。

OSCのデリバティブ部門長ケビン・ファインは、次のように述べています。「改訂案により、取引先の匿名性を確保しながら店頭デリバティブ市場の透明性および効率性を高めることができます。」OSCはCSAの店頭デリバティブ委員会と協力して改訂案を作成しました。また、ケベック州とマニトバ州の証券監督機関も同様の改訂を発表しています.

TR規則は2013年12月31日に発効しました。TR規則の最新の改訂は2015年4月30日に発効しました。

OSCは、不公平、不正、詐欺的行為から投資家を守り、資本市場の公平性、効率性、そして信頼性を育むことを目的としています。

詳しくは、下記の「関連リンク」にあるLexologyに掲載された記事「マニトバ州、オンタリオ州、ケベック州で提案された取引報告規則の改訂案」をご覧ください。

決済・市場インフラ委員会がコルレス銀行に関する協議報告書を公開

2015年10月、決済・市場インフラ委員会(CPMI)は、コルレス銀行に関する協議報告書を公開しました。国際決済銀行のウェブサイトに記載されているとおり、コルレス銀行は、「特に国境をまたぐ取引に関して、グローバルな決済システムに不可欠な要素です。コルレス銀行との関係を通じて、銀行は異なる管轄の金融サービスにアクセスし、特に国際取引や金融包摂に役立つ、国境を超えた決済サービスを顧客に提供することができます。近年まで、銀行は幅広いコルレス銀行のネットワークを維持していましたが、それが変化を迎えていることを示す兆候が増えています。具体的には、このようなサービスを提供する一部の銀行が、維持する関係の数を縮小させています。

「CPMIは協議報告書で、基本事項の定義を行い、コルレス銀行の主な利用タイプを示し、最近の動向をまとめ、それを支える牽引要素に触れています。報告書は、次の項目に関連する特定の技術的施策を見直します。(i) 顧客の本人確認(KYC)ユーティリティ、(ii) LEIの利用促進、(iii) 情報共有メカニズム、(iv) 決済メッセージの改善。報告書は、各技術的施策の長所と短所の詳細な分析の後、業界や当局に対し4つの検討事項を提言しています。」

報告書は、技術的施策案に関するコメントを2015年12月7日まで受け付けています。

欧州証券市場監督局が欧州市場インフラ規則の導入に関するQ&Aを更新

2015年10月1日、欧州証券市場監督局(ESMA)が、欧州市場インフラ規則(EMIR)の導入に関するQ&Aの14回目の更新を行いました。「この更新では、取引先がLEIを取得した場合や、買収や合併により取引先のLEIが変更となる場合に、取引先の識別子を更新するために取引先と取引情報蓄積機関が行うべき手順が示されています。」

米国連邦エネルギー規制委員会:規則制定案の告示

Energy Legal Blogの報告によると、2015年9月17日、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、地域送電機関(RTO)や独立系統運用機関(ISO)が管理する卸売市場に参加するため、取引主体に公開が義務付けられる情報の大幅な拡大を提案する規則制定案(NOPR)の告示を行いました。FERCの提案では、「市場参加者は契約上、従業員、その他ビジネス上の様々な関係に関する追加情報を提出する必要があります」。また、市場参加者はLEIを取得する必要があります。

Energy Legal Blogは次のように述べています。「FERCの提案が承認された場合、各市場参加者は、関連取引主体データの中で自分のLEIと、関連する各取引主体のLEI(公開されている場合)を報告する必要があります。」FERCは次のように述べました。「市場参加者に、関連する取引主体とLEIデータの公開を義務付けることにより、FERCや各市場が、反競争的、操作的行為を防止、発見するのに役立ちます。」FERCはさらに次のように述べました。現在「市場参加者やその他取引主体の関係性は複雑化する場合があり、明確な見通しが欠けています。」加えて、次のように述べました。「市場参加者の素性が不確かで、異なる識別子を利用して異なる市場や現場で取引を行う可能性があるため、市場操作の発見や防止にこの情報を最大限に活用できていません。」

米議会:新法案「2015年金融調査局説明責任法」を発表

「2015年金融調査局説明責任法」は、2015年10月9日に米国の立法プロセスを開始しました。この法案は、米財務省の金融調査局に対し、金融取引に参加する法的に明確な取引主体を識別するための、英数字を使用した独自のシステム(「取引主体識別子」)の導入に関する主要な金融規制当局による成果の詳細な説明に加え、そのようなシステムの使用を必要とする規則のリストや、それらの機関が確実にその導入を行うためのアクションなど、次の年に向けた局の優先事項の詳細な作業計画を毎年公表する義務を与えるように、ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法を改訂するものです。当法案によると、金融調査局は適切な安全措置を行いながら、局が保有するデータの整合性と機密性を保護するためのサイバーセキュリティ計画を策定し、実施する必要があります。」(米国会議会図書館要約)

米消費者金融保護局が住宅ローン情報開示法の実施につながる規制Cを修正する最終規則を発表

2015年10月21日のBallard Spahr LLPによる報告によると、米消費者金融保護局(CFPB)は、住宅ローン情報開示法(HMDA)の実施につながる規制Cを修正する最終規則を発表しました。これにより、住宅ローンの融資プロセスの透明性を高めるため、ほとんどの貸手に、住宅ローンの申し込みやローンに関する特定の情報の報告が義務付けられます。

この金融規則は、「金融危機によって明らかになった情報に関する不備を改善し、住宅所有者、住宅購入希望者、全国の各地域のニーズに応えるため、HMDAのデータを更新する必要がある」というCFPBの考えを反映しています。

最終規則では、「規制Cの対象となる団体、規制Cの対象となる取引、対象となる団体が収集、記録、報告を義務付けられる特定の情報、情報の報告および公開プロセスに変更が加えられています。多くの規定は2018年1月1日に発効します。対象となる団体は2018年に新しいHMDA情報を収集し、2019年3月1日に報告することになります。」

Ballard Spahr LLPによると、2018年1月1日以降、対象となる団体には、対象となるローンの組成、購入、申請に関する追加情報の収集、記録、報告が義務付けられます。CFPBによると、追加の情報により、「公正な融資に関する問題がないかどうか検査し、公正な融資に関する問題が一番多くみられる、危険性の最も高いエリアに各団体や規制当局が注力できるようになります。」

さらに、Ballard Spahr LLPは次のように報告しています。「HMDAの規則は、十分に確立されたデータ標準と報告要件を合致させ、貸手の報告負担を軽減させるため、取引主体識別子、ユニバーサルローン識別子、ローンの目的、事前承認、施工方法、占有タイプ、融資額、民族、人種、性別、購入者の種類、スプレッドレート、抵当権の状態、拒否理由など、特定のデータポイントに変更を加えます。」

LEI規制監視委員会が進捗報告書「グローバルLEIシステムと、規制措置におけるLEIの使用」を発行

LEI規制監視委員会(ROC)は、世界的な取引主体識別フレームワーク、グローバルLEIシステムを監督するため、2013年1月に設立された世界40カ国以上、60以上の公的機関によるグループです。LEI ROCは、GLEIFの監督役として、GLEIFがグローバルLEIシステムの原則に従っていることを確認します。2015年11月5日、LEI ROCは進捗報告書「グローバルLEIシステムと、規制措置におけるLEIの使用」を発行しました。LEI ROCが代表する管轄の当局は、「LEIを使用して少なくとも48の規制措置を行いました。その内容は当報告書に記載されています。」報告書によると、このようなLEIの使用はG20の目的に沿うものであり、「当局や市場参加者が金融リスクを発見、管理するためにLEIを役立てるというG20の表明に合致しています。」

LEIの導入に関連する規制施策の詳しい情報は、GLEIFウェブサイトの「規則制定」の項目をご覧ください(下記の「関連リンク」参照)。

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著者について:

シュテファン・ヴォルフはGlobal Legal Entity Identifier Foundation (GLEIF)のCEOです。2023年、彼はドイツ国際商工会議所(ICC)の理事に就任しました。2021年には、グローバルICCデジタル標準イニシアティブ(DSI)の下部委員会として新設された産業諮問委員(IAB)に任命されました。この任のもと、信頼できる技術環境に関するワークストリームの共同議長を務めています。ヴォルフ氏は、2017年1月から2020年6月まで国際標準化機構金融専門委員会FinTech専門諮問グループ(ISO TC 68 FinTech TAG)の副コンビナーを務めていました。2017年1月、ヴォルフ氏は、One World Identityが選ぶトップリーダー100人のひとりに選ばれました。ヴォルフ氏は、データ処理およびグローバルな実施戦略の確立に関して、豊富な経験を持っています。彼はキャリアを通じて、主要なビジネスや製品開発戦略の発展をリードしてきました。また、彼は1989年にISイノベーティブ・ソフトウェア社を共同設立し、初代専務取締役を務めました。その後、同社の後継企業であるIS.テレデータAG取締役会のスポークスマンに選ばれました。同社はその後、インタラクティブ・データ・コーポレーションに買収され、ヴォルフ氏は最高技術責任者に就任しました。彼はフランクフルト・アム・マインのJ.W.ゲーテ大学で経営学の学位を取得しています。


この記事のタグ:
規制, コンプライアンス, 店頭(OTC)デリバティブ, コルレス銀行, LEI ニュース